軽いレポートを仕上げていた。
なんだったか。「金槐和歌集についての私見」だったか。
部屋の戸を叩く音が聞こえた。
玄関先には、隣室の村崎さんが立っていた。
この人は人妻で、去年の秋に産まれたらしい赤ん坊がいる。
「どうしました?」
「うるさくなかったですか?すみません」
何のことだろうと思った。
レポートに集中していて聞こえなかったのかもしれない。
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