月曜日の午後9時過ぎ。わたしは叫びたいほどの苛立ちを胸に、蒸し暑い繁華街から駅に向かう帰路についていた。この職場で仕事を始めてもう2年以上経つというのに、患者さんのダブルブッキングというありえない初歩的なミスをしてしまった。しかしそれだけなら自己嫌悪に陥ってもサッと気分を切り替えて明日からの仕事をがんばることのできる年齢のわたしであるが、問題は終業後に折り返した母からの電話である。頻繁に連絡を取り合う仲でもない母からの電話だったので、面倒半分心配半分で折り返しの電話をかけてみればすぐさま後悔した。やれ『そろそろ結婚しないのか』やれ『次女は大企業勤めでがんばっている』やれ『三女はお金持ちの御曹司を彼氏として連れて来た』そして極め付けは『あんたもマッサージなんてよくわからない仕事はさっさと辞めて、どこかいいところに嫁ぎなさい』である。
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