のどかな里山にある、昔の古民家を改装したカフェ。そこが僕の職場である。あまり交通の便は良くないが、知る人ぞ知る、隠れ家的なカフェとして、雑誌の取材を受けることもある店だ。提供される食材は全て有機栽培のもので、まだ20代の若い女性店長がこだわって選んでいる。朝、僕がそのカフェに入ると、店長はすでに開店の準備をしていた。淡いピンク色のエプロンと、同じ色の三角巾を頭につけて、店のキッチンで食器を出している。素朴な恰好が店長の美しさを引き立たせていた。エプロンも食器も地元の先生に教えてもらいながら、店長が自分で作ったものらしい。店の前に、おすすめを書いた看板を出すと、いよいよ開店時間だ。僕は店長が作った料理を客に運んでいく。客の数は多くはないが、かえってそれが、古民家の落ち着いた雰囲気とマッチしている。昼になると、ランチを食べにくる客が増えるため、店は少し忙しくなるが、店長は料理や接客を上手にこなしていた。
↧